地震 、雷、火事、オカン

子供の頃に「おまえの母ちゃんデベソ~」とふざけて言ったわたしの友達を家に呼び、精神攻撃を延々と浴びせ続けて泣かすぐらいには常軌を逸している部分がある母から、朝ごはんを食べていると「お母さんな、大腸の検査してもらいに行かなあかんねん」と不意に告げられ口から食パンを発射しました。そのような重めのパンチをZIP!見ながらしれっと繰り出されても困るなあとうんざりしながら「…何それ?」と聞いたら「検便に血が混じっててん」と言い、「…検査いつ?」と聞いたら「今日の昼から」と言うのでマーライオンのごとく口からコーヒーを垂れ流しました。お、おめえいいパンチ持ってんなあ…と膝から力が抜けていくのを感じながらも気を取り直して結果が出たら絶対メールするように、あと朝ごはん中に検便の話をするのはやめてとしつこくお願いしてから出勤したものの、万が一のことがあったらどうしよう…と悪い結果を想像しては気分が滅入り、気が気でなくなり、意味なくフロア内をぐるぐる回ってみたりしながらメールを待ちましたが、夕方になっても音沙汰なし。まさか…?いやそんなことは…と不安が押し寄せてきていてもたってもいられなくなりおそるおそるメールしたところ、

「気になる結果は…」

「どっち?」

「アウト?セーフ?」

「ヨヨイのヨイ」

「セーフでした」

「晩ごはんは焼きうどんです」

と数分おきに小刻みな返信がきて、こめかみから何かが連続して断ち切れる音がしました。やがてそらそやろ感に全身が満たされました。むしろその流れでアウトだったりしたらちがう病院に行ってほしいし、途中に救急車の絵文字が入っているのもなぜか無性に腹立たしい。でも最後のお知らせはちょっと嬉しい…焼きうどん…好き…といろんな感情でわなわなしながら、でもほっと安心して、身体の力が抜けてしまい、椅子に倒れこんだ拍子にブブミッとおならとおなら以外のものが出て、わたしも検査してもらったほうがよいのでは…とは思いました。

 

小学生のボクは、鬼のようなお母さんにナスビを売らされました。

小学生のボクは、鬼のようなお母さんにナスビを売らされました。