そのためのプロ
門限の時間ぎりぎりに彼女を家まで送る僕。そして少し軽めの、さよならのキスをする僕。淋しさを顔から消して、「家に着いたらまた電話するね」と言いながら背中を向けると、彼女がぎゅっと手を握ってきたので驚いて振り向く僕。心なしか目を潤ませた彼女を見てドキッとする僕。そんな僕に向かって、少し間を置いてから、意を決したように彼女が口を開く。
「キスだけじゃイヤッ!」
「えっ?」
「だから、キスだけじゃイヤなのっ!」
「ふむふむ。じゃあ何をしてほしいの?」
「え、えっちがしたいです…」
「ビンゴ!」
そんな経験がまるでないから10年続いた「キスイヤ」が来週で終わったところで痛くも痒くもない。「キスすらイヤッ!」ってすごい勢いで突き飛ばされる側の人間が何言ってんだって罵られても気にしない。キスは無理、でも他はOKというルールだって存在するのだから。指名もできるし延長もできるのにそれ以外に何か必要なのだろうか?
- 作者: 酒井光雄
- 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日: 2006/02
- メディア: 単行本