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ほんとにあった怖い話

あれは確か、今年の6月末の出来事だと記憶している。空前絶後に仕事が忙しく、背後に迫りつつある納期の影に怯えながら徹夜を強いられていた我々は、そのうえ疲労のせいでなんだかおかしなテンションに成り果てた末、「もう死にそう」「俺も」「てゆうかこのままの状態があと1ヶ月続いたら絶対死ぬって」「てゆうかいっそのこと殺してもらったほうが」「そしたらさ、ちょっと休憩がてらに遺書でも書いとく?」「おお、それは名案ですね!」「さすがは田中さんだ!」と盛り上がったその流れで、遺書を書いて順番に朗読する運びとなったのだ。3と3の倍数の時以外もアホになる我々。そして30分ほど経った午前4時過ぎ、ある者は目尻に涙を溜めながら、家族や恋人、友達に対する感謝の言葉を述べ、またある者は淡々と、やり残したいくつかのことを読み上げ、またある者は充血した目をさらに血走らせて、唾を撒き散らせて、上司に対する呪詛を吐き続け、やがて僕にも順番が回ってきた。

最後にひとつだけお願いがあります。
亡骸を棺にぶち込む前に、チンコの皮を剥いてください。
これでもかというほどに先っちょをさらけ出してください。
そうしてくれたらおとなしく成仏します。
死後硬直しようが、僕のチンコがカチカチになることはもうありません。
だから可能なはず。
だいじょうぶ、きっとやれるさ。

僕の遺書は、おおむねこのような内容だった。正直なところ、そこそこ自信はあった。しかし読み終えても、オモロー!とはならなかった。あれっ?と不審がりながら周りを見渡すと、なぜかその場にいる者はすべからく、まるでいきなり仕事中に包茎っぷりをカミングアウトする変態が現れて戸惑っているような、そんなまなざしで僕を見ていた。怖かった。怖かったのですほんとうに。

怖い話はなぜモテる

怖い話はなぜモテる

  • 作者: 稲川淳二平山夢明
  • 出版社/メーカー: 情報センター出版局
  • 発売日: 2008/05/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)