先生、DVDが見たいんです

(前回までのあらすじ)
最後の撮影が終わると百恵は、大きくふうっと息を吐いた。あるいは放心していたのか焦点の合っていない目で、この1年とちょっとの間を振り返っていた。興味本位とかそういう軽い気持ちで飛び込んではみたもののすぐに後悔したこと。想像以上に恥ずかしかったりつらかったりの連続で人目もはばからずに何度も泣いたり拗ねたりしたこと。たくさんの人にいっぱい迷惑をかけたこと。最近は慣れたけどいつも誰かに見られているような気がして外出するのが怖くなったこと。むしろ今まで逃げ出さずにいたことが不思議であり、結局最後までこの仕事を好きになれなくて、とはいえ淋しい気持ちがないわけではなくて、少なからず応援してくれている人達に対する申し訳なさを感じていたりもするわけで、いろんな気持ちがないまぜになり、戸惑って、俯いた。肩が震えた。スタッフに差し出されたティッシュで、涙以外のなにかでべとべとの顔を拭った。静かに現場を抜けて、シャワールームへ向かった。誰もいなくなったベッドの真ん中には、ぽつんとバイブが置かれていた。…というような物語ではなくて、これは買ってきたDVDを取り出したら割れてしまった、ただそれだけのありふれた、でも悲しい男の物語である。しかしこの男、転んでもただでは起きないというか、転んだら自力では起きられないというか、飛べないくせにただの豚ではなかったのだった。
「オーケイ、決着をつけようじゃないか」

18:00

(性的な意味で)再びDVDを買いに行きました。

18:20

(性的な意味で)鷹のような眼で吟味するまでもなく、(性的な意味で)今宵のオカズが決まりました。

18:40

(性的な意味で)まず普通のひとには見えないであろう速度で帰宅しました。

18:45

(性的な意味で)ケースからDVD本体を取り出しました。

19:30

無事に取り出すことに成功しました。前回の反省を生かしたその姿はまるで爆弾処理班のようでした。

(注:手前が前回割れたやつで、奥が今回買ってきたやつです)

19:40

僕が爆発しました。いっぱい出ました。

愛と復讐の挽歌

愛と復讐の挽歌