バレンタインデーに僕が得たもの

本日18:00より、日頃の感謝を込めておまいらにチョコレートをプレゼント!

というパチンコ屋からの携帯メールにうっかり釣られてみたところ、なぜか2列に並ばされ、つまりそれぐらいには僕と同様に釣られた阿呆魚がいたのですけど、15分ほど待たされた果てにダンボール箱を抱えて現れたのは雇われ店長のおっさんであり、あまつさえそいつが苦虫をかみ潰したような顔をしつつチョコレートを配りはじめたので金玉袋の緒が切れそうになりました。去年のクリスマスにバイト女子がサンタのコスプレしていたという実績を踏まえて、ある程度の期待にズボンを膨らませて足を運んでいるというのになんてこった!さすがに遠隔操作疑惑が絶えない店だけあって地獄に突き落とす術をよくご存知でいらっしゃる!というかよく見ると、列の中にはご婦人がちらほら混じってたりしてこれはバレンタインデー絡みというよりもむしろ限りなく石原軍団主催の炊き出しに近いイベントなのかもしれませんので、チョコを受け取るやいなやぞろぞろ現れた渡やら舘やらに強引な手口で日本興亜損保の保険に加入させられるに決まってる!嫌な予感がしたのでそっと列から抜け出して、何事もなかったかのように秘宝伝パチスロ)を打ちました。


2万円失ったところで、なぜこの時は嫌な予感がしなかったのかと自分を問い詰めたくなりました。おまえのこれからの人生にチャンスなどないのだよ!とでも言わんばかりにチャンス目すら出ないという有様で。それでもヤケクソになりながら打ち続けていると、「お兄ちゃん、ちょっとこれ押したってー」と隣で打っているおばさんに声を掛けられました。やや言葉足らずなので翻訳しますと、「そこのハンサムなお兄さん、私の打っている台がどうやらボーナス成立したようなので、お手数ではありますが目押しをしていただけますでしょうか?」と、だいたいこのような意味であり、パチンコ屋ではわりと日常茶飯事であり、ただ自分がドツボにハマりつつある時にお願いされると少々いらっとせずにはいられないわけで。でも彼女はじっと僕のことを見つめ、彼女が着ているカーディガンに刺繍されたヒョウやライオン、キリンといった野生動物のみなさんも僕のことをじっと見つめている。断ったが最後、喉元を食いちぎられるにちがいないので慌てて目押ししてさしあげました。ビッグボーナスですか。ふうん。いいですねえ…。


その後おばさんの台はどうやら伝説ロングに突入したらしく、ボーナスを引く(おばさん)→「押したってー」(おばさん)→目押し(僕)のループが発生し、はたして僕は何のために生まれてきたのか教えてほしくなってきた頃、さすがに悪いなと思ったのか「コーヒー、冷たいのと熱いのと、どっちがええ?」と気遣いをチラリズムしてくるおばさん。本来かなりロスしているであろうコインの枚数を考えたらそれぐらい当然っちゃあ当然であり、なにより喉が渇いていたので「冷たいのがいいです」とお言葉に甘える僕。すると彼女がこじゃれたハンドバッグをごそごそして取り出したのはオレンジ色の物体。「ほれ」と、僕に差し出されたのはどう見てもミカンでした。コーヒーとミカンがどうしても繋がらないので頭の中はパニックになりましたが、むしゃむしゃ食べたら喉はちょっと潤いました。でもほんとはコーヒーがよかったけど。でもしばらくして、ドル箱1つがっちょり出したたおばさんはそれで満足したらしく、「お兄ちゃん、これ打ったらええがな」と、おそらく伝説ロングをまだ抜けてなさそうな台を僕に譲ってくれました。おばさん素敵。帰り際にもう1個ミカンを手渡されたのでアッー!てなりましたけど、あなたのおかげでなんとか撃沈コースはまぬがれることができました(ありがとうございます)。そんなこんなで今年のバレンタインデーで得た教訓は「野生動物が刺繍された柄の衣類を着用したご婦人には親切にすべし!」ということになりましたので、みなさんも参考にしてはどうかなと思うのですが。

頼むから静かにしてくれ

頼むから静かにしてくれ

  • 作者: 六田登
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/12/22
  • メディア: コミック