空想は時間を裏切らないし、時間も空想を決して裏切らないし、零士はそんなこと言わない

小倉優子さんは空想をしないことでおなじみですが、僕はほぼ毎日、空想をしています。空想にまみれている、といっても過言ではありません。あまつさえ油断していると、寝ている間でさえ空想をしてしまいます。業界ではそれを「寝空想」(ねぐうそう)と呼んでいます。ちなみに屋外で空想するのは「野空想」(のぐうそう)と呼んでいます。「シースー」とか「ギロッポン」のようなものです。そんなわけで今日も仕事をしていたら猛烈に空想がしたくなったので、トイレへ行きました。職場のトイレには洋式と和式が1つずつあり、普段は洋式を利用するようにしています。なぜなら自分の足で自分の体重が支えられない奇病を患っているからです。冗談です。それは顔だけにしておきます。太っているから疲れるというのが本当の理由です。でも洋式はすでに誰かが利用していましたし、空想が漏れそうだったので、諦めて、今日は和式で空想することにしました。入室しました。そして両手の親指にズボンとパンツを引っ掛けて一気に下ろし、はっけよいのこったのポーズ(似合いすぎ)を取って、めいいっぱい肺に空気を取り込んで、ふおおおおっ、わちゃあっ!と吐いて、空想をはじめました。ちなみに空想をする時は下半身のみ生まれたままの姿で、なおかつ空想中はブバボッとかミチミチッとか耳慣れない音がするのですが、そこらへんの理由は自分でもよくわかりませんが、「ハードだぜ…」と思わずそうつぶやいていました。つまり、空想があまりにも硬かったのです。業界では一般的に空想は柔らかければ柔らかいほどよいとされ、逆に硬いもの(硬度10以上を指します)は「過恥空想」(かちくうそう)と呼ばれて忌み嫌われています。なぜならトイレットペーパーにベルリンの赤い雨が降り注ぐからです。とある部分がものすごく痛くなったりもします。辛いものを食べた次の日にはその部分にドモン・カッシュが宿ったりもしますし、最悪の場合は手術です。そんなことはさておき、「過恥空想」(かちくうそう)が出っ放しで途切れません。ということはすなわちこれはむしろ「長空想」(ながぐうそう)なのかもしれませんが、いずれにしろこの状態を誰かに見せたなら、な、なんと立派な茶色いシッポ…!ギニャー!!!と腰を抜かすにちがいないだろうし、このままではおそらく便器から空想があふれてしまうだろうし、それだけはなんとしても避けねばなりません。だから、ゆっくりと、8の字を描くようにくりくりと腰を回しました。こうすることで便器内の全体に(もちろんデルピエロゾーンにも)まんべんなく空想が行き渡り、オーバフロー防止の効果が得られるはずです。分かりづらければ、はじめの一歩のデンプシー・ロールか、桃鉄のとびちりカードを想像してみてください。でもただでさえつらい体勢なのにこんな大技を繰り出すなんて、我ながら無謀の極みでありましょう。生まれたての仔馬のように足がぷるぷると震えています。豚なのに変な話ですねえ。というよりいつになったらこの空想は止まるのでしょうか。すでに「長空想」(ながぐうそう)どころか「自棄空想」(やけくうそう)じゃないですか。ただそれだけのことじゃないですか。だから全部水に流そうと思ったのです。ねえ敬之。

ウンココロ手帖

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