大喜利脳育成計画

かなりの頻度で失恋を経験しているため、告白するまでもなく相手の視線で全てを察して試合が終了するため、その都度髪を切っていると破産してしまいます。だから丸坊主にして寝癖がどうにもならない程度まで伸びたらまた丸坊主という斬新なシステムを採用して、はや3年が経ちました。昨日の朝、どうにもならなくなっていることに気づいたので、散髪に行きました。サッカー方面には非常に敏感なので、ワールドカップにちなんで「小野伸二みたいな髪型にしてください」と美容師のおにいさんにお願いしたところ、全てのミッションが完了した後、鏡に映っているのはバッファロー吾郎の木村さんでした。美容師のおにいさんの髪型が、明らかにレミオロメンのヴォーカル風だった時に危機を感じるべきだったのでしょうか僕は。満面の笑みを浮かべて「これでいいですか?」と確認してくるレミオロメン。その笑顔と垂らした前髪が憎い。僕が垂らすべき前髪は、すでに床へ散らばっているというのに。でもだからといって、「ダメ。これは無理だからどうにかしてください」とお願いすることもままならず。なぜなら一枚刈りに成り果てた僕に残された選択肢は、(1)五厘刈り、(2)スキンヘッド、(3)鈴木みのる、の三択であり、いずれを選択したところでサラリーマンらしさをより失うだけだろうから。なら僕は木村であり続けるべきではないかと、そう結論づけました。いまだ満面の笑みを浮かべ続けているレミオロメンに向かって、「いい仕事をしたね」と伝えました。すると彼は、レミオロメンではなくなりました。接客用の仮面を脱ぎ捨て、見るものを射すくめるような厳しいまなざしでこう問いかけたのです。
「なら貴様に問うっ!……丸坊主と掛けまして、居候(いそうろう)と解きます。その心は?」
謎掛けキタコレ。まさか散髪屋さんでクイック大喜利が始まるとは思いませんでした。静まり返る店内。他のお客さん、店員さん、全てが固唾を呑みながら僕を見つめています。もちろん普段の僕ならこの圧力に押しつぶされて、愛想笑いを浮かべながら「ウンコマン参上!」と意味不明なヒーローの一つも作り上げていたのかもしれませんが、この時の僕はひどく簡単に回答を思いついたのでした。
「ヘアー(部屋)がない!」
はにかんだ顔で見つめること数秒の後、レミオロメンに戻ったおにいさんは涙を流しながら僕を抱き締めました。店内が拍手と歓声に包まれる中、僕は僕が田中でありながら木村を強いられたその理由を考えていました。いや、考えるまでもありませんでした。おそらく彼は、外見を変えることが内面へ何がしかの影響を及ぼすであろうという、その可能性に賭けたのです。ダイナマイト関西の主催者でありますところの木村さんに限りなく近づけることで、僕の大喜利脳の覚醒を促そうとしたのです。抱擁することで、レミオロメンの体温と息づかいを感じることで、彼の意思がまるで僕の中に溶け込んでくるようでした。なぜひとは抱擁するのか、それをようやく理解できたような気になりました。「また、来てもいいですか?」「うむ。道に迷った時は、またここの門を叩くとよい」「で、いくらでしたっけ?」「2,200円です」的なやりとりの後、家に帰って大喜利の練習を数時間こなしました。更にオフ喜利オールナイトレポ(id:hurricanemixer:20060610:1149941483)を拝見して、審査委員長が必要以上に偉そうな点もひっくるめて、大喜利の楽しさと怖さなどを学んだりもしました。今日は朝からパチンコ店に行ってCRエヴァンゲリオンを打ちますが、これは特に大喜利とは関係がありません。「釘が甘いねん」と友達に教えてもらいました。確変が引きたい。ただそれだけです。